BLOG
9.22026
わかなのブログvol.19 あの日を忘れないために。福島で原発事故を経験した私が、今も原子力防災について考え続ける理由
2011年3月11日。
私は15歳でした。
福島県伊達市で東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故を経験しました。
あの日から15年以上が経った今でも、大きな地震のニュースを見るたびに胸がざわつきます。
それは、地震そのものへの恐怖だけではありません。
「もしまた原発事故が起きたら。」
その不安が、今も心のどこかに残っているからです。
最近も国内で大きな地震が続き、その中で「モニタリングポストが停止した」という報道を目にしました。
「また同じことが繰り返されるのではないか。」
そう感じた人も少なくなかったと思います。
だからこそ今回は、東日本大震災で何が起きたのか、そして現在の原子力防災は何が変わり、何が課題として残っているのかを、私自身の経験も交えながら整理してみたいと思います。
あの日、私たちは何も分からなかった
震災当日、テレビから流れてきたのは津波の映像でした。
その後、「原発で異常が起きている」という情報が少しずつ伝えられましたが、私たち住民には何が起きているのかほとんど分かりませんでした。
見えない放射線。
見えない放射性物質。
何を信じればいいのか分からない日々でした。
事故後、「SPEEDI(スピーディ)」というシステムの存在を知った人も多かったと思います。
SPEEDIは動いていた
「SPEEDIが使われなかった」という話を耳にしたことがある方も多いでしょう。
正確には、SPEEDIは停止していたわけではありません。
事故直後から、放射性物質がどの方向へ流れるかを予測する計算は行われていました。
しかし、事故当時は原子炉からどれだけ放射性物質が放出されているのか分からず、仮定の数値で計算するしかありませんでした。
さらに、「予測だから公表すると混乱する」という判断や、国・関係機関・自治体の情報共有の混乱も重なり、計算結果は住民避難に十分活用されませんでした。(海上保安庁)
その結果、風下となった地域へ避難してしまった住民もいました。
後に政府事故調査委員会や国会事故調査委員会は、この情報共有や避難判断の問題を大きな課題として指摘しています。(海上保安庁)
モニタリングポストとは
一方で、「モニタリングポスト」はSPEEDIとは役割が違います。
SPEEDIは「これからどこへ広がるか」を予測するシステム。
モニタリングポストは、実際の空間放射線量を測定する装置です。
つまり、
予測ではなく、
「今、その場所でどれくらい放射線量があるか」
を測っています。
しかし、このモニタリングポストも万能ではありません。
東日本大震災では十分に機能したのか
震災当時、一部のモニタリングポストは
・停電
・通信障害
・設備の故障
などによってデータが取得できなくなりました。
また、現在ほど観測地点も多くありませんでした。
つまり、「全く機能しなかった」のではなく、「十分な体制ではなかった」というのが実態です。(海上保安庁)
事故後、日本の原子力防災は変わった
2012年に原子力規制委員会が発足し、日本の原子力防災は大きく見直されました。
事故前はSPEEDIによる予測が重視されていましたが、現在はモニタリングポストなどの「実測値」を基本として避難判断を行う仕組みへ変更されています。(海上保安庁)
さらに、
・可搬型モニタリングポスト
・モニタリングカー
・航空機による測定
など、多重的な監視体制も整備されました。(海上保安庁)
事故から学び、改善されたことは確かにあります。
それでも止まるモニタリングポスト
しかし近年でも、大きな地震やトラブルの際にモニタリングポストのデータ送信が停止する事例は起きています。
例えば能登半島地震では停電や通信障害による欠測が発生し、可搬型設備などで補完されました。
また近年の熊本県の地震でも、一部のモニタリングポストでデータ送信が停止し、原子力規制委員会は停電や伝送系統の障害が原因である可能性を公表しています。(海上保安庁)
もちろん、「モニタリングポストが止まった」ことと、「放射線が漏れた」ことは同じ意味ではありません。
通信が止まっただけで、原子力施設に異常がないケースもあります。
だからこそ、事実を正確に理解することが大切です。
一方で、災害時には通信や電源が失われる可能性があることも、私たちは忘れてはいけないと思います。
実測だけで十分なのか
現在の防災では実測値が重視されています。
これは大きな前進です。
しかし実測には一つの特徴があります。
放射性物質が到達してから初めて数値が上がるということです。
つまり、
「来る前」
ではなく、
「来た後」
に分かる情報です。
だからこそ、予測と実測をどう組み合わせるのかは、今も専門家の間で議論が続いています。(海上保安庁)
私が伝えたいこと
私は原発事故を経験しました。
だからといって、不安だけを広げたいわけではありません。
大切なのは、
「怖がること」
ではなく、
「知ること」
だと思っています。
SPEEDIとは何だったのか。
モニタリングポストは何を測っているのか。
なぜ止まることがあるのか。
現在はどんな対策が取られているのか。
事実を知ることは、不安を少しずつ具体的な備えへ変えてくれます。
そして何より、私たちは東日本大震災から多くの教訓を得ました。
その教訓を風化させないこと。
改善されたことは正しく評価し、残された課題についても目を背けず考え続けること。
それが、同じ悲しみを繰り返さないために私たちができることではないでしょうか。
15歳だった私が経験したあの日は、もう過去の出来事ではありません。
あの日の教訓は、未来の命を守るために生かされてこそ意味があります。
だから私はこれからも、感情だけではなく、事実と向き合いながら、原子力防災について学び続け、伝え続けていきたいと思っています。

