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1.72026
1992年 国際会議「チェルノブイリ核惨事後の世界1」ベラルーシ科学アカデミー
今年は、チェルノブイリ40周年。
いつもは、愚痴のような話ですが、ベラルーシの科学アカデミーからいただいた文章をご紹介していきたいと思います。
記録のためにも。チェルノブイリ事故後5年の節目(1991年)、チェルノブイリ法が成立。
1991年12月に旧ソ連崩壊。
国家崩壊のさなか、どのような研究や調査がつづいていたのか、日本の事故対策の参考になると思います。
難解な文章がつづきますが、資料の翻訳は多くのボランティアさんのチェックもされております。しばらくご紹介していきたいと思います。
「まえがき
チェルノブイリの惨事は、国家、政治家、科学者、専門家たちに、経済の、生態系の、医療の、社会の、人口統計学の問題、そしてその他数々の複雑な問題を投げかけた。チェルノブイリは、国家の道徳の原則や健全さに関する政策を試すような、さまざまな見方、アプローチ、専門的意見の交錯点となった。
チェルノブイリ原発の惨事は、二百万人以上の人が住むベラルーシ共和国の5分の1を放射能で汚染した。放射能汚染は、生態系全体を、農地を、町や市を襲った。
ベラルーシ科学学院、保健省、国家計画省、その他の組織の経済学者と専門家による推計によると、1986年から2015年までの間にチェルノブイリ原発の惨事がベラルーシ共和国にもたらす損害は六百億ルーブルにものぼるとのことだ。
幾万エーカーもの耕地が、耕作されないままになっている。施策が行われているにもかかわらず、現行の食品放射性物質含有基準に適合する食物を入手するのは困難である。
安全な生活条件保障のための行政的機構が複雑で施策がはかどらないため──ところによっては、まったく行われる可能性がない──人々の移住を必要としてしまっている。一部の人々の自発的な流出(も起きている)は、人口のかたよりをもたらしている。
世論調査は、セシウム-137 によって1km2あたり15キューリー以上汚染されている地域に住む人々の大多数は移住を希望していることを示している。(※1)
この移住の決意を支えている理由は、人々が彼ら自身あげているのは、健康状態の悪化と、これらの問題を解決できるのだろうかという、国家の能力への疑念である。これらの問題とともに、新たな移住地区にも問題がある。避難者の雇用を保障するための適切な社会経済基盤整備と日常の生活必需品供給がうまく行われていないことなどである。移住者たちの3分の1は、生活水準の悪化を訴えている。移住は、文化的歴史的価値の喪失、生まれ育った土地からの別離をひき起こしている。
特に憂慮されているのは、健康の保護、農業技術の開発、経済の停滞などへの対策の貧困さである。
汚染地域での施策にもかかわらず、子どもと大人両方の病気の増加、染色体異常が報告されている。このことは病理学上の問題を増加させ、これは非常に重要なことである。私の考えでは、染色体異常は、放射能の生物への影響にまず第一に帰されるべきであり、それは甲状腺癌の急増により証明される。とるにたりないほど少量の放射能線量が、生物の新陳代謝と同様に免疫、内分泌腺、循環器などの機能を不調にするという結果をもたらすことがわかってきている。同時に起こっているその他の生態系的要因による影響が状況の複雑さにつけ加えられているにせよ、これらの要因が病理の引き金となっているのでろう。
放射能の状況と生態系や人類へのその後の影響の両方を予想するにはかなりの複雑さがあることを強調する必要がある。それは、放射性の粒子、超ウラニウム元素、その他の存在における、セシウムやストロンチウムの反応の異なった力学を含む、多くの要因による放射性物質の反応と関連している。
健康上の危険を推定するためには、爆発直後に人々がこうむったより大きな線量と、内外被曝の間のさまざまな生物学的影響に与える、同時に起こる放射性物質の衝撃、ヨードに攻撃されている組織体の放射能感受性に起こりうる変化、放射能とその他の要因の複合的な影響、年齢差による放射能感受性、その他を考慮に入れなければならない。このことは、国際的組織の現在の勧告を利用するには十分な機会を与えていない。
とても重要なことのひとつは、放射能線量の許容量の問題である。許容最大被曝量と介在のレベルは、専門家ごとにまちまちの数量を言っている。それらの量は、国々によってもまちまちである。ベラルーシ共和国では、許容最大被曝量が年間1ミリシーベルト(mSv) にされている。このことは、1ミリシーベルト以下の線量でのイオン化する放射能の無制限の影響に付随するものは、保健対策から除外すべきだということではない。
この放射能の基準は、ベラルーシ共和国最高評議会が採択した「チェルノブイリ原子力発電所の惨事の結果被害を受けている市民の社会的保護に関する法律」「放射能汚染された領土の状況」の基礎に使われている。
この論文は、惨事の医療的生物学的結果のデータのほんの少ししか含んでいない。これは1992年ミンスク市で開催された国際会議「チェルノブイリ惨事後の世界」で報告されたものである。惨事によってもたらされた問題の複雑さは、これらの報告をこえるものがあることを暗示していると言える。
ベラルーシ共和国科学アカデミー放射能生物学研究所所長
E.コノプリヤ教授、医学博士、
米1 1km2あたり15キューリー 1キュリーとは、深さ5㎝で汚染土壌を採取した場合、569 Bq/kg程度の汚染である。」

